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解決事例


(1)賃金の不払い

 短期大学1年生のAさんとBさんは、吉祥寺駅前の飲食店「チキンレッグ」で働いていましたが、きちんとお給料が払われていませんでした。
①求人と実態とのズレ
 ネットの求人サイトには時給1000円と書かれており、アルバイトはみな時給1000円で働いていると思っていましたが、実際に給料明細を見ると時給900円になっていました。店長にこのことを聞いたところ、研修期間中は900円だと言われました。しかし、2人はそのような約束をした覚えがなかったですし、そもそも店から契約書も渡されていませんでした。
②「早上がり」、急にシフトが消える
 「チキンレッグ」では、客が少ないときに「早上がり」として予定より早く帰らされたり、店側の都合で急にシフトをキャンセルされて働けなくなったりしても、その分の手当は一切支払われませんでした。

法的ポイント

  • 法律上、アルバイトであっても賃金や雇用期間などの労働条件を書面で通知することが義務づけられています。また、何の説明もなく研修期間を設けて時給を引き下げたりすることは当然違法です。
  • 会社の都合で急にシフトが変わって、働く時間が短くなった場合、会社はその日に支払われるべき賃金の6割以上の手当(休業補償)を支払うことが義務づけられています。
  • 他店舗へヘルプに行く際の移動時間についても、出勤後に会社の指示で移動している訳ですから、賃金の支払い義務が発生します。

解決方法

 被害にあった2人は、ブラックバイトユニオンのメンバーと一緒に、店舗に直接行って団体交渉をしました。
 上記の3点について交渉した結果、2人はその場で、未払いになっていた賃金の全額(約5万円)を受け取ることができました。このような未払い賃金は、過去二年にさかのぼって請求することができます。自分ひとりで交渉しても対応してもらえないことが多いですが、ユニオンのメンバーと一緒に交渉することで解決できます。

 こちらの事例の詳細についてはユニオンのブログをご覧ください。
「吉祥寺の飲食店「チキンレッグ」での団体交渉の報告 」

(2)罰金・自腹購入

 大学三年生のCさんは、働いていた都内のコンビニのある「ルール」に疑問を持ちました。その店舗では、レジの違算が出た場合に、レジ打ちのアルバイトが自己負担で補てんすることになっていたのです。
 Cさんも、ミスをしたという証拠がないにも関わらず(証拠があっても自己負担をしなければいけないケースはほとんどないですが)、何度も違算分を自己負担させられていました。
 また、クリスマスケーキなどの販売ノルマがあり、ノルマを達成することが出来なければ、自腹で購入しなければなりませんでした。Cさんは、知り合いにお願いしてケーキを買ってもらっていましたが、それでもノルマを達成することができず、アルバイトのお給料でクリスマスケーキを3つ買わされました。

法的ポイント

  • 店長や上司から「買え」と命令されたり、「買わなければクビだ」と言われたりするなど、買い取りを「強要」するのは違法です。また、商品の代金を「給与から天引きされる」という場合は、労働基準法違反です。もちろん、こうした商品の購入を「強要」された場合は、そのお金を返すよう請求できます。
  • 「罰金」もほとんどの場合、労基法違反です。「罰金」を合法的に徴収するには、就業規則に定めがあり、且つそれが合理的な内容である場合に限られます。このケースのように、レジの違算の責任を全部バイトに押し付けて補てんさせることは、合理的ではないので、違法です。

解決方法

 Cさんは、ブラックバイトユニオンのメンバーと一緒に店舗に行き、店長と直接話し合って、補てんさせられた違算分と、自腹で払わされたクリスマスケーキなどの代金の合計約3万円をその場で取り返すことが出来ました。
 労働組合法上、会社は、ユニオンとの話し合いを拒否することはできません。ですから、ユニオンに加入することで、会社と話し合って、問題を解決することができます。

(3)コマ給による賃金不払い

 湘南ゼミナールが運営する森塾で働く大学生講師のDさんは、給与がコマ給で支払われており、授業時間以外に対して、ほとんどお給料が支払われていないということに疑問を抱きました。
 授業前の準備の時間や、授業後の報告書の作成の時間や会議の時間に対し、給料が支払われていなかったのです。また、講師は休憩も取りづらく、15時半頃から22時過ぎまで、ご飯を食べる時間も取れないといった問題もありました。

法的ポイント

  • 授業以外の労働時間について賃金が支払われていない場合、その分は賃金不払いとなるので当然違法です。
  • 授業以外の労働時間も加えて計算すると、最低賃金を下回る場合があります。これは最低賃金法違反にあたります。
  • 労働時間が8時間を超えた場合、割増賃金を払わなければなりません。また、22時以降は深夜割増賃金を払う義務があります。個別指導塾などではコマ給のみを支払って、これらを支払っていないことが多いですが、違法です。
  • 6時間以上の労働で45分、8時間以上で1時間の休憩時間をもうけることが、会社に義務付けられています。

解決方法

 Dさんは、ブラックバイトユニオンに加入して、株式会社湘南ゼミナールに団体交渉を申し入れました。3回にわたる団体交渉や労基準監督署への通報などを通じて、同社の労働条件の改善を求めました。
 当初、会社が労働条件の改善に難色を示したため、街頭での宣伝活動や労働基準監督署への申告、マスメディアを通じての情報発信を行いました。こうした活動の結果、会社は、過去2年間をさかのぼって現職者、既退職者を問わず、森塾で働く全アルバイト講師に対して、総額5000万円分の未払い賃金を支払いました。
 また、これまでは夕礼(会議)の時間に対して賃金が支払われていませんでしたが、その時間分の会議給(60分当たり910円の水準)が支払われるようになりました。

 湘南ゼミナールへの団体交渉申入れの様子はこちらのブログで紹介されています。
「湘南ゼミナール(森塾)に団体交渉を申し入れました。」

(4)勤務時間の丸めによる賃金支払い(給料が1分単位で支払われていない)

 高校3年生のEさんは、昨年1月より近所にあった「サンクス」のフランチャイズ店舗で働いていましたが、以下2つの違法行為がありました。
①15分単位の賃金支払い体系
 Eさんは、シフト上の勤務開始時刻 20 分前(9時開始の場合8時40分)に出社して着替えなどを行い、店長から研修で指示された通り、「出勤15分前以降」(8時46分)に「出勤時刻」を店舗のPCに記録していました。しかしこの店舗では、15分単位の賃金支払い体系(15分未満を丸めて給料を支払わない仕組み)をとっていたため、勤務開始はシフトの時間通り(9時00分)とみなされ、店舗にきて着替えやその他業務に従事していた20分間(記録上は14分間)の給料が払われていませんでした。
②レジの違算分をアルバイトが補填
 また、Eさんの職場では、レジの点検業務をする際に、記録されている金額とレジに実際にある金額とに誤差が出た際、その一部を自己負担させられることがありました。

法的ポイント

  • 賃金は1分単位で支払わなければいけません。15分単位などで給料が計算されている場合、切り捨てられた部分は未払い賃金になります。また、準備の時間も当然労働時間に含まれるので、着替えや掃除の時間についても取り返すことができます。
  • 事例「罰金・自腹」の法的ポイント②を参照

解決方法

 Eさんは、ブラックバイトユニオンに加入して、「サンクス」を運営する株式会社コンビニ・Y&Nと団体交渉をしました。
 その結果、会社とブラックバイトユニオンの間で、「給料1分単位支払労働協約」などの労働協約を締結することができました。労働協約というのは、労働組合と会社の間で結ぶ「契約」のことです。これによって、現在同社が運営する「サンクス」5店舗では、15分単位での賃金支払いやレジ違算の自己負担などの違法行為はなくなりました。
 さらに、Eさんを含む同社の全従業員に対して、レジ違算の自己負担金の全額と、未払い賃金(総額約500万円)を支払ってもらいました。

 サンクスでの事例の詳細はこちらのブログをご覧ください。
「「サンクス」勤務の高校生がユニオンに加入し、会社と労働協約を締結しました!」

(5)シフトの強要

 京都の大学に通う大学2年生のFさんは、将来は教員志望で、いい経験になると思ってS塾でアルバイトを始めました。当初、Fさんは週二日のシフトを希望していました。
 しかし、塾長から週5、6日のシフトを強要されてしまいました。大学の授業があってシフトに入れないと伝えても「バイトだと思うな」「講師の都合で負担をかけるな」と言われ、無理やりシフトを入れられました。
 また、5分で終わるような雑務のために塾に呼び出されたり、教材作成のために無賃で徹夜作業をさせられたりすることがありました。

法的ポイント

 S塾では雇用契約書などによって労働条件が定められていないため、自分のやるべき仕事の範囲が決められていませんでした。週に何日・一日何時間働くのかについても明確な取り決めがありませんでした。もちろん、会社が労働条件を通知しないことは、違法なのですが、仕事の範囲や労働時間については、何ら取り決めがないため、仕事量や労働時間の際限が無くなっていました。

解決方法

 Fさんは、ブラックバイトユニオンとともにS塾と団体交渉を行いました。その結果、きちんとした雇用契約書が作成され、塾の講師全員と、契約をきちんと書面で交わすことになりました。例えば、週3日、月曜日は休む、一日4時間を限度、22:30以降の仕事はできない、などです。
 そのうえで、「学業安心シフト協約」というルールを作りました。代行授業、試験監督などの通常シフト外の出勤を拒否できること、通常シフト以外の出勤が早くから予定されている場合には、会社側は少なくとも2週間前までに要請することなど、が盛り込まれました。
 こうして、S塾は学生バイト講師が安心して働ける環境になりました。

(6)パワハラ・セクハラ

 大学生のGさんは、数店舗のチェーンを持つカフェで働いていましたが、カフェの店長からパワハラ・セクハラを受けていました。
 他のバイトなら、少し注意するだけで済ませているようなちょっとしたミスでも、Gさんの場合は客の前で人格を否定するような暴言を吐かれたり、仕事が終わったあとも残らされて延々と叱責されたりしました。また、日常的に体を触られるといった被害を受けていました。

法的ポイント

 会社は、労働者が安全で快適に働ける職場環境を確保する義務があります。また、職場でのハラスメント加害者は、職場環境を悪化させたことによる懲戒処分を受ける場合がありますし、民事上は損害を賠償する義務が発生します。暴力・脅迫などに関しては、刑法上の責任を問われることがあります。

解決方法

 Gさんとブラックバイトユニオンはこのカフェを運営する会社と団体交渉を行い、パワハラ・セクハラ加害者の店長を謝罪させたうえで、苦痛で働けなくなった分の賃金を補償してもらいました。また、こうしたハラスメントが二度と起こらないように会社が対策を講じることになりました。
 職場で起こるハラスメントについては、裁判などの司法手段で解決することもできますが、今回のようにユニオンの交渉によって解決することもできます。なお、セクハラに関する女性からの相談については、ユニオンの女性メンバーが相談に応じています。